やっぱり人は見た目が9割?見た目以上に私が得たもの

70歳を超えてもなお、警備員のアルバイトとして多くの人々を支えている男性。人生100年時代と言われている近年、とても生き生きとしている彼を目の前にすると、その言葉に頷かずにはいられない。

「とにかく見た目は大切。第一印象は変えるのにも時間がかかってしまうものだ」
男性の力強いその言葉に、インタビュアーもついつい引き込まれていく。
彼の抱く「美」へのこだわり、そして増毛している理由とは…

―――

美意識が生み出すもの

41歳でカツラデビューをし、今のヘアスタイルを維持してかれこれ30年以上。定年してからしばらく6年ほど働いていなかったが、今は平日毎日、警備員のアルバイトをしている。ボケ防止には普段から足腰を使うといいらしいから、立哨や巡回をする警備の仕事は70代の私にはうってつけだ。お金も稼げるうえに、足腰を動かしてボケ防止にもなっている。まさに一石二鳥。いやいや、それどころじゃない。適度に体を動かして健康・体力維持にもつながっているので、一石三鳥にもなっている。

充実した日々を過ごしている私だが、離婚を経験し、今は90代の母と2人でマンション暮らし。本音をいうと、定年を機に一度はカツラを卒業しようかとも思っていた。とはいうものの、髪型が急に変わってしまうことで、同じマンションの住民から驚かれたり、脳の血管が切れて手術するために髪の毛を剃っちゃったんじゃないか、なんて心配されたりするのも不本意なこと。経済的にも苦しいわけじゃないし。これまで通り、平穏な毎日を過ごしたい。そして、何よりもカツラを外すことに対して、自分の美意識が許せなかった。

やっぱり人は見た目が9割

身だしなみを整える男性

私自身の美意識というのは、頭のてっぺんから足の先まで人から見られる部分は少しでも印象を良くしたいというものから派生している。つまり、人は「見た目」が大切だと考えている。人から見られる印象は、初めて会うときの第一印象で決まると思うからだ。

10年以上前、100万部超えるベストセラーになった「やっぱり人は見た目が9割」をご存知だろうか。その本の根拠となったのが「メラビアンの法則」。米国の心理学者・アルバート・メラビアンが1970年代に提唱した概念だが、人の第一印象は初めて会ったときの5秒以内で決まるという。その第一印象を決める情報の55%が「視覚から得た情報」だと。さらに、相手に与えた第一印象を覆すには時間が掛かる。まさに「見た目」が大切なのだ。この本が当時売れたのは、日本の社会も「見た目」を重要視する時代に傾いてきたということを物語っている。

見た目を気にしていた私が薄毛を気にし始めたのは30代後半。そのころは薄毛の自分を鏡で見るたびに「老けて見える…」と、大きなため息をついていた。

父親は亡くなるまでちゃんと髪の毛があった。もともとは私も髪の毛の量は多かったので、毛髪に関してはてっきり父親似だと思い込んでいた。しかし、35歳ごろから徐々に薄くなってきて。減りゆく毛髪を鏡に映しながら、ふと思い出したのが坊主だった祖父の姿。やはり、祖父も毛量が徐々に減ってきて坊主にしたのだ。私はきっと祖父の遺伝子を受け継いでしまったと、半ばあきらめつつも、薄毛を解消できる方法がないものかと考えあぐねた。

悩み解消のきっかけ

そんな私の悩みを解消してくれるきっかけとなったのが、スポーツ新聞の広告だった。そこである毛髪関連の広告が目に入ってきたのだ。当時大手のかつらメーカーは、「広告を見て実際に行ってみると、倍以上の費用がかかった」などと、あまり評判は良くなかった。とはいっても、毛髪関連の情報には敏感だった私。半信半疑ではあったが、自分の髪を活かしながらできるカツラがあることを知った。

それは金具式のカツラと違って、地毛とカツラを編み込んでいく。はたから見てカツラをしている印象がほとんどなく、自然なスタイルが実現できるという。これこそ自分の美意識と合致するヘアスタイルを手に入れられるはずだと思った。

ついに、増毛デビューをして理想のヘアスタイルを手に入れた41歳。やはり増毛後は何人かの知人、友人から「増毛したの?」と単刀直入に聞かれる。気付かれてもいいと思っていたので、隠すことなく正直に答えた。そうすると、「増毛してからのほうが若く見える」と、いずれも肯定的な反応だった。

幸いに、私の耳には悪い評判は入ってこなかった。たとえ陰で噂されていたとしても、「最初の1カ月くらいだけ。そんなに他人は私のことなんて気にしていない」と、そうわりきっていた。人の噂や評価を気にせずにここまでこられたのも、この自然なカツラと出会えたことで得られたものの方が大きかったからだ。

見た目だけじゃない。得られたものの数々

太陽を切りとる手

得られたもの。その1つは、趣味を堪能できたこと。当時、洋楽のレコードを聴くのが趣味だった私は、大ファンだったブルース・スプリングスティーンの来日初公演のチケットを友人に頼み込んで取ってもらった。増毛後、初のコンサート。それまでは薄毛を気にして大勢の人が集まるコンサートなどに足を運ぶことさえも億劫だった私。周りの目を気にせず久しぶりの生の音楽を楽しめたときの感動は、今でも強く記憶に残っている。

一番大きかったのは、胸を張って仕事を続けられたことだ。定年前は公務員で人と関わることが多かった私。増毛した40代以降は、自信を持っていろんな人と話すことができた。「この人は若々しいな」という印象を与えられていたことは間違いない。そんな印象を持たれるだけでも、得していると感じた。

増毛によって人生を謳歌している私を誰よりも喜んでくれたのは母だった。私と同じ美意識を持っていた。薄毛の著名人などがテレビで登場すると、「薄毛は老けて見えるだけじゃなくて、きつい印象も受ける。それを売りにしている役者やタレントは別だけど」なんて、母も話していた。本当に世の中、薄毛で損をしている人は多いのではないだろうか。

人生100年時代を楽しむために

lifeのサイコロをもつ男性

最近、私と同じように増毛を始める人は、定年後の男性が多いという。人生100年時代といわれるようになって、「老後を楽しみたい。どうせなら若く見られて余生を過ごしたい」と思う人が増えてきたのだろう。昔から「ぼろを着てても心は錦」と、外見よりも内面が大事だということわざがあるが、私からしたら、その考え方は時代遅れ。これからは「ぼろを直せば、心も錦になる」。増毛をして、人生を楽しく過ごしてきた私が言うのだから間違いない。