薄毛コンプレックスが人生を変えた!?帽子と職業との微妙な関係

間もなく40歳になる実業家の彼。以前は名の知れたパフォーマーとして活躍されていたが、今は自身で起こした会社を切り盛りする経営者である。人前に立つエンターテイナーから経営者になったことで、それまでの自分のトレードマークであり、舞台衣裳でもあった「帽子」が、実業家としては奇妙に見えてしまうことに気付いた。そんな彼には大きな悩みの種があったのだ。

コンプレックスの解消<カツラをしている不安

二十歳を過ぎた頃にはもう髪の毛が薄くなりはじめていた。「ヤバイ」と思いつつ、当時はお金も無かったので、どうしたかというと、借金までして増毛をしてカツラも試した。
当時コマーシャルで強いインパクトのあった会社で増毛やカツラをやってはみたが、コマーシャルの印象とは程遠く、自分のコンプレックスを解消してくれるものではなかった。
その期間、増毛で半年、カツラに至っては、たったの1週間という始末…

何故かというと、コンプレックスの解消どころか、使っていて不安の方が先行してしまうのだ。「もしかして、バレてる??」という不安もあり、仕事も何も手がつかない状態が続いた。

さらに、いい状態を保つのに予想以上のお金がかかることがだんだんわかってきて、若かった当時の俺には借金するしかなく、それも相当きつかった。
だから、今使っている編み込みタイプのウィッグ、これに出会うまでは何もしなかった。そう、十何年もの間、ずっと帽子をかぶっていた。

帽子をずっとかぶっていられる職業に

俺は人よりも少々器用なところがあると自負している。その長所は趣味にもつながり、やがて「職業としてどうなのか?」と考えるようになった。一方で、帽子は片時とも手放すことは考えられない。仕事中もだ。

だから、エンタテイメントなパフォーマーとしてなら帽子をかぶりながら仕事をしてもおかしくないだろうってことに気づいた。それどころか、帽子はパフォーマーにとってトレードマークといってもよいくらい必需品でもある。
髪の毛が薄かったことで、パフォーマーとして生きていくことになるとは、今更ながら自分でも少し驚いている。

パフォーマーとしての仕事はいつも順調というわけではなかったが、自分なりにがんばってきたからなのか、出演先が増えていった。同時に人脈が増え、同業者を派遣できるまでになった。そしてついにパフォーマーの派遣会社を起業した。すると海外との人脈が増えていき、日本語学校をも起業するまでになった。

会社経営が順調にいけばいくほど、帽子が離れていく

昼は会社経営、夜はパフォーマー。そんな二足のわらじを履いた生活がしばらくの間続いた。そして、少しずつパフォーマーよりも会社経営の方の比重が大きくなっていった。
結局最後は、パフォーマーとしては実質引退した状態になり、会社経営の生活がメインになっていった。

するとどうだろう。

最初のうちは会社経営者として帽子をかぶってコミュニケーションをとることが許されていたのだが、パフォーマーだったことを知らない人との出会いが多くなると、帽子をかぶりながら仕事をしていくことが難しくなっていった。儲かることはうれしいのだが、これは大きな誤算だった。

だから、十何年ぶりにもう一度「髪のことをちゃんとしなきゃ」と思ったのである。
たまたま自分の会社の事務所の近くに増毛やカツラで誰もが知っていると思われる大手の店舗があったので、早速相談に行った。しかし実際に説明を聞いていると、不思議と若い頃に髪のことで失敗したことが甦り、同じ臭いを感じたので、結果そこはお断りした。

十何年ぶりの増毛=帽子との別れ

「さて、どうしようか?」と時間が過ぎていく中で、たまたまYoutubeでウィッグをつけていると公言している有名人が、自分の髪のようにウィッグを洗っている動画を目にした。この有名人、俺の中では辛口なイメージがあり、逆にその辛口な人が「良い」と言っていることに信用を覚えた。

今まで聞いたことのない会社ではあったが、着脱するタイプではないということもどこか気になってしまい、相談にいき、ここで俺は新しい髪を手に入れた。
同時に会社経営者として、帽子をかぶって人前に出るということも無くなった。

以前は「バレたらヤバイ」という一心で、逆にそれが気持ちの負担にもなっていた訳だが、本当に自然なものを身に着け本当に周囲もわからないと、おもしろいもので「自分から周囲に打ち明けてみようか」と思うようになった。
実際に着け始めてまだ試用期間のうちに、何軒かの飲み屋に行く度にカミングアウトしてみた時、誰もがお世辞でもなんでもなく「えっ?」「全くわからない」「どういう構造になっているのか?」という反応が返ってくるので、それはもう快感でしかない。

髪の変化と共に、事業も順調に進み、さらに良き伴侶との出会いもあった。
彼女はもちろん俺がウィッグをしていることを知っているが、俺と同様そのことを気にも留めていない。二人で良く、旅行や温泉に行くのだが、ウィッグをしていても普通の行動ができるし、外している姿を見たことが無いので、「カツラをしている」という意識にさせないそうだ。

コンプレックスのおかげでパフォーマーという仕事に就き、それがきかっけで起業も成功し、起業が成功したおかげで髪のコンプレックスが無くなった。

この巡りあわせを不思議に感ぜずにはいられないが、感謝もしている。