季節のせい?抜け毛が止まらない時に考えられる原因と対策

男性にとって抜け毛は悩みのタネですよね。お風呂に入っている時やシャンプー中、起床時に抜け毛を見つけて、「ひょっとしてハゲてしまうかも?」と不安になる人も多いはず。

そもそも人の毛は生え変わるものですので、抜け毛が出ること自体は正常な生理現象です。基本的にはあまり心配する必要はありません。しかし、抜け毛の量があまりにも多い場合は注意が必要です。放置していると薄毛やハゲが進行してしまうかもしれません。

では具体的に、一日に何本程度抜けると危ないのでしょうか。また、もしも抜け毛が止まらない場合には、どうすればいいのでしょうか?

この記事では抜け毛が多い時の原因や、脱毛症や薄毛についての基礎知識を紹介します。

麹町皮ふ科・形成外科クリニック 苅部 淳 先生
麹町皮ふ科・形成外科クリニック
苅部 淳 先生
形成外科一般、マイクロサージャリー、リンパ管吻合術、乳房再建術、性適合手術、美容外科手術、静脈瘤、レーザー治療など美容外科手術、レーザー、ボトックス、ヒアルロン酸等 大手美容外科クリニックで長年にわたり研鑽を積み、形成外科専門医として医師の診療、指導にあたっている。

一日100本程度の抜け毛なら問題ない

本数別の抜け毛の量のイメージ画像(10本~100本)

起床時やシャンプー中に抜け毛を見つけた方は、「こんなに抜け毛があって大丈夫……?」と不安になるかもしれません。ですがご安心ください。人はそもそも一日に平均して50本~100本くらいは自然と髪が抜けるものなんです。

秋には抜け毛が200300本に増える

 「でも、明らかに100本より抜け毛が多いんだけど……」そう思う方もいらっしゃるかもしれません。

抜け毛の量は季節にもよります。特に秋は抜け毛が多くなる季節。秋には平均して一日200本~300本程度の抜け毛が出ることもあると言われています。抜け毛が気になるときが秋であれば、ある程度抜け毛の量が多くなってもそれほど心配しなくてよさそうです。 200本の抜け毛の量のイメージ画像

(200本の抜け毛量のイメージ)

花王(株)生物科学研究所主任研究員の服部道廣氏は、45歳の女性における抜け毛の年間推移を記録し、次のような図にまとめています。この図の0日目とは1月1日のこと。この図から10月から11月にかけて抜け毛の量が増えることがわかります。

【図表】季節による一日当たりの抜け毛数の変動(赤丸は筆者) 季節による一日当たりの抜け毛数の変動グラフ(赤丸は筆者によるもの) 【出典】服部道廣『養毛・育毛剤の評価法―人における新評価法―

これには、哺乳類が体毛を夏毛から冬毛に生え変わらせる「換毛期」が人間の遺伝子にも残っているからではないか、という見解があります。

もしくは、夏の紫外線が頭皮の「酸化ストレス」を増加させ、酸化ストレスによって毛包幹細胞が機能しなくなってしまうことで、秋に抜け毛が増えるのではないか、という説も。

このように、秋に抜け毛が増える現象については様々な説がありますが、いずれにしても1日に200本~300本程度の抜け毛であれば正常な範囲だといえます。気にしすぎなくても大丈夫ですよ。

抜け毛と深く関わる「ヘアサイクル」とは?

ヘアサイクル(毛周期)のイメージ図

「自分の抜け毛の量が正常な範囲か知りたい」「抜け毛を減らしたい」…そんな方は、まず毛が生える仕組み「ヘアサイクル」を知っておく必要があります。

ヘアサイクルとは、一言でいうと「髪のライフサイクル」のこと。つまり毛が生え、成長が止まり、抜け、また新しい毛が生える一連の周期のことです。

通常のヘアサイクルは以下3つの段階を繰り返します。

  • 成長初期~成長期:毛髪が伸びていく時期。期間は3~5年程度
  • 退行期:毛髪の根本にある「毛球」が縮まり退化する時期。期間は2~3週間
  • 休止期:毛髪の成長が完全に休止する時期。期間は数ヶ月

ヘアサイクルのタイミングは、髪の毛一本一本で異なります。成長期を迎えている毛髪もあれば、退行期や休止期の毛髪もあるのです。

休止期から成長期に移る際には、古い髪の根元で新しい髪が伸び始め、古い髪が押し上げられます。これが自然な脱毛の原理です。 しかし、ヘアサイクルが乱れると、成長期の期間が短くなり、逆に休止期が長くなってしまいます。

つまり、髪の成長が早く止まってしまい、細く短い髪の割合が増えます。また休止期の髪が多くなるため、新しく伸びてくる髪よりも抜ける髪の方が多くなります。 これらの結果により、髪の毛が薄く見えてしまうのです。 正常なヘアサイクルと異常なヘアサイクルの比較図

毛髪が抜けるのは休止期から成長期にかけてのタイミングですが、通常であればこの時期を迎える髪は一度にそう多くは存在しません。

そのため、一度に500本~1,000本単位で髪がごっそり抜けるということは、正常時にはほぼ起こらないのです。

秋以外でも抜け毛が止まらない時に考えられる主な原因

明らかに抜け毛の量が多い場合、主な原因は以下の4点であると考えられます。

  • 男性型脱毛症(AGA)である
  • 円形脱毛症・脂漏性脱毛症など、AGA以外の脱毛症である
  • 頭皮環境が悪化している
  • 他の病気の影響がある

これら抜け毛の原因について詳しく確認していきましょう。

男性型脱毛症(AGA)である

男性型脱毛症はAGA(Androgenetic Alopeciaの頭文字)とも呼ばれ、その名の通り男性によく見られる脱毛症です。男性型脱毛症になると、生え際や頭頂部の髪の毛が薄くなっていきます。

男性型脱毛症の主な原因は、男性ホルモンであると考えられています。

詳しい原理を解説します。 テストステロンと5αリダクターゼⅡ型が髪の毛の成長を抑制する仕組みのイメージ図

男性ホルモンの一種に「テストステロン」というものがあります。テストステロンは血液中を漂っていますが、これが前頭部や頭頂部の毛乳頭細胞(毛髪の根元にある細胞)に到達すると「男性ホルモンを活性化させる酵素(II型5αレダクターゼ)」と反応します。

そして、テストステロンがさらに活性化した「ジヒドロテストステロン(DHT」に変換されるのです。

このDHTが、毛乳頭細胞にある「男性ホルモン受容体」と結合することで、ヘアサイクルの成長期を短くする方向に作用するため、薄毛が進むと考えられています。

ちなみに、AGAの治療を始めて3週間後~3ヶ月後くらいに、抜け毛が増える現象が発生することがあります。これは「初期脱毛」と呼ばれますが、正常な反応ですので心配はいりません。

円形脱毛症・脂漏性脱毛症など、AGA以外の脱毛症である

洗面台で手に絡まった抜け毛

男性型脱毛症(AGA)以外の脱毛症である可能性もあります。代表的な脱毛症は次の2つです。

  • 円形脱毛症
  • 脂漏性脱毛症
円形脱毛症

円形脱毛症とは、一部分からごっそり毛髪が抜けるような症状を示します。毛髪がまとまって抜け、脱毛部分が円形、もしくは楕円形を描くことからこのように呼ばれています。

円形脱毛症の主な原因は、普段は私達の身体をウィルスや病原菌などから守ってくれる免疫が異常に機能してしまう「自己免疫疾患」です。また、アトピーや精神的なストレス、遺伝、女性ホルモンの減少などが原因になる場合もあります。

ちなみに円形脱毛症は、大人のみならず子供でも発症することがあります。子供が発症した場合には特に精神的ケアが重要です。

脂漏性脱毛症

脂漏性脱毛症とは、脂漏性皮膚炎の結果引き起こされる脱毛症です。そして脂漏性皮膚炎とは、皮脂の分泌が多くなることで生じる皮膚炎のこと。皮脂が過剰分泌されることで皮膚上にいるマラセチア菌が異常繁殖し、炎症を引き起こすのです。肌が赤くなりかゆみやフケが発生します。 脂漏性皮膚炎の原因は、遺伝やストレス、食事やホルモンバランスの崩れ、不十分な洗髪などです。

頭皮環境が悪化している

ハンバーガーやアメリカンドッグのイメージ画像

頭皮環境の悪化は毛髪への栄養供給を阻害し、ヘアサイクルの乱れを引き起こします。頭皮への負担の原因は、主に次のようなものが挙げられます。

  • 食生活の乱れ
  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 寝る時間の遅さ
  • 過度な喫煙や飲酒
  • 過度な洗髪
  • シャンプーの洗い残し
  • 汗や皮脂の蓄積
  • 紫外線

食生活において特に注意が必要なのは、揚げ物など動物性脂肪の多い高カロリーな食べ物。このような食べ物を多くとりすぎると血液中にコレステロールが増加し、血液の流れが悪くなってしまいます。結果として血液中にある栄養素が毛乳頭まで届きにくくなり、髪の成長を妨げてしまうのです。 ビタミンBのイメージ画像

またビタミンB群の不足にも注意が必要です。ビタミンB群の不足は、頭に細かいフケが発生し薄毛が進む「粃糠(ひこう)性脱毛症」の原因になります。ビタミンB群は脂肪分の少ない豚肉やさつまいも、玄米などに多く含まれています。進んで摂取するようにしましょう。

さらに配慮頂きたいのは「洗髪」。洗髪しないのはもちろんNGですが、洗髪しすぎてもNGなのです。

洗髪をしすぎると、頭皮の皮脂が必要以上に取り除かれてしまいます。すると人体は頭皮を守るために、皮脂の分泌量を過剰に増やそうとするのです。

結果として、過剰に増加した皮脂により毛穴がつまり、抜け毛の増加につながってしまいます。

他の病気の影響がある

脱毛症以外にも、次のような病気の影響で抜け毛が多くなる可能性があります。

  • 梅毒
  • 鉄欠乏性貧血
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
  • 膠原病(こうげんびょう:リウマチ熱、関節リウマチ、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎など)
  • 抜毛症(トリコチロマニア)

薄毛の原因についてもっと詳しく知りたい方は「男性の薄毛・抜け毛の原因は?髪が生える基礎知識とセルフチェック法」をご覧ください。

止まらない抜け毛、どうやって対策すればいい?

育毛剤と薄毛対策シャンプーのイメージ画像

薄毛は「予防すること」はもちろん、薄毛になってしまったあとに「進行を止める」「回復させる」「目立たなくさせる」行動をとることも大切です。

薄毛を予防したり、進行を止めたり、回復させたりするには、まずは頭皮環境を良くし、ヘアサイクルを正常に戻す必要があります。

そのためにできることについては、「抜け毛が多い時期は?頭皮ケアのスペシャリスト直伝!抜け毛の基準と対策方法」の記事で詳しく解説しています。

また、ヘアカットやヘアセットに一工夫を加えることで、薄毛をカモフラージュすることも可能です。「薄毛の方でもカット次第でイケてる髪型に!これだけ変わるビフォーアフター6選」の記事も参考にしてみてくださいね。

いずれにせよ大量の抜け毛が続くような場合は、AGAやその他の脱毛症かもしれません。

「ひょっとしたら脱毛症かも……」と思ったら、発毛や薄毛治療を専門とするクリニックにも相談してみることをオススメします。

参考文献
服部道廣『養毛・育毛剤の評価法―人における新評価法―
日刊ゲンダイヘルスケア「秋から冬は抜け毛が増えるは本当か 頭髪なら1日何本?
岐阜大学 科学研究基盤センター 共同研究講座 抗酸化研究部門「酸化ストレスで髪が抜ける!?脱毛と酸化ストレスの関係
アデランス「ヘアサイクルと脱毛のメカニズム
医療法人社団則由会「AGA(エージーエー)とは 薄毛・抜け毛の原因と治療薬
ウィメンズヘルスクリニック東京「大量のフケが出る粃糠性湿疹(脱毛症)の原因と対策
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